都議補選北多摩 すべての子どもが楽しく過ごせる学校に ~桜丘中学校の実践~
コロナウイルスの影響で長期休校になっていますが、「学校」は今子どもたちにとってどんな思いを持つ場になっているでしょうか?
いじめや不登校でつらくなっていたり、発達に偏りがあったり、ルールに縛られることに息苦しさを感じていたりする子どもたちにとっては行きたくない所になっているでしょう。
そんな課題を抱えていても、すべての子どもたちが3年間楽しく過ごし、行きたいと通ってこれる学校でありたいと実践しているのが、世田谷区立桜丘中学校です。
この学校には校則も定期テストも宿題もありません。服装も自由、教員が強い口調で押さえつけることもなく、教室に入りたくない子は廊下に設置されたスペースでパソコンを見たり、本を読んだりめいめいに過ごすことができます。また、空いている教員がマンツーマンで勉強を教えたりもします。そのため、小学校から不登校だった生徒も通ってこられるようになるなど、一人ひとりの成長を教員全体で支えています。
では、反対に何があるのか?
例えば生徒総会で廃止が決定された定期テストの代わりに、出題範囲を狭めた小テストをします。これは単元ごとになっているので勉強しやすく、再チャレンジできる再テストもあって良いほうの点数が採用されます。宿題はなくても、この小テストのために勉強する習慣がつき、その結果、全体の学力は高くなったそうです。
そして校則を無くしたことで、”靴下は白”など生徒にとっては理不尽な校則を守らせようと躍起になっていた教員のストレスが減り、それによって教員と生徒の信頼関係が増し、生徒もしていいこと悪いことを自分で考え判断する場面が増えました。
他にも、話をしたい先生と一対一で何でもじっくりと話せる「ゆうゆうタイム」は、安心して自分の困りごとを出せるので、いじめや虐待の早期発見にもつながっています。また、放課後のカルチャークラブ(ボーカルレッスン、料理教室etc...)や、地域の方の協力を得て100円の夕食がついている「夜の勉強教室」もあり、どんな子も孤立しないよう、授業や部活以外にも様々な居場所があります。
教員たちも生徒の興味を掻き立てる授業を工夫し、「3Dプリンターで心臓の模型を作って理解を深める授業」や、すべて英語での調理実習なども行われています。
公立中学校で本当にそんなことができるの?!
多くの方がそう思われるでしょう。
10年前までは普通の中学校だったこの学校を変えたのは、西郷孝彦校長先生です。
肢体不自由の子どもたちが通う養護学校から教員生活を始め、校内暴力が吹き荒れる中学校などで生徒との信頼関係を作ってきた経験を経てきた方だからこそ、校長として一人一人にとって楽しく通って来れる学校とはと考え続け、教員に働きかけてその意識を変え、それによって子どもたちの自主性や本来持っている力が出てくる学校になっていったんだと思います。
横並びに安住しがちな日本の社会の中で、その道のりは困難なことも当然あったと思いますが、子どもたちが生き生きと変わっていく姿こそが、これがあるべき方向と先生の背中を押してくれたんだと感じます。
生徒も教員も育っていけるこんな学校が増えていって欲しいと切に願います。
そのためには、10人にひとりが不登校となってしまった今、西郷先生のような先生の能力や努力に期待するだけではなく、日本の教育そのものの改革が必要です。

今年2月のちょうふ福祉実践フォーラムで基調講演をされた西郷校長先生と